大学院での授業は、①大学院(研究科、専攻)共通科目②プログラム専門科目の大きく2つに区分されます。
①はその研究科等に属する学生向けの授業、②はそのプログラムの特性を発揮した専門的な授業です。
なお履修は自由に行うことができ教師教育デザイン学プログラムに属する私も教職開発プログラムの授業を受けたことがあります。
①大学院(研究科、専攻)共通科目
社会科学、自然科学、生命科学等がどのように発展して現代社会を形成したかを歴史を接点として幅広い分野を俯瞰的に理解する授業や、各教育科学領域の研究法やそれに付随する研究倫理を学習し、自らの専門分野を相対化する授業等があります。
大学院生になり研究室に足繁く通うようになると、専門外の教授や学生と接する機会が激減してしまいます。
自分の専門分野を客観視し、社会的な視点を忘れないためにも必要な授業です。
②プログラム専門科目
専門的知識を取得する授業です。
私は地理学に関する授業を中心に履修しています。
以下に私が受けた授業を紹介します。
・イギリスの地理教科書翻訳・分析
イギリスで出版された地理の教科書を学生で翻訳・分析を行う授業です。
今年度は国際バカロレア機構の教育プログラムに基づき執筆された教科書を取り上げ、どのように理念が反映されているかも含めて学習を進めています。
日本の教科書と比較し、「取り上げる内容がどう違うか」のみならず、「なぜこのように記述されているか」「この問いは生徒にどのような能力を身につけさせたいのか」まで踏み込んで議論をしています。
教科書を深く理解しようとする姿勢、また批判的思考力を育成できる授業です。
・地域や自然を理解するためのフィールドワーク
東広島市周辺地域をフィールドとし、聞き取り調査やドローン空撮を行うことでその地域・自然環境を理解する授業です。
今年度は東広島市黒瀬町で戦時中の呉の専用水道についてや、東広島市安芸津町大芝島で褶曲構造がみられる露頭についての調査を行いました。
新設される地理総合で重要視されている地域調査の手法を学べる授業です。
最終的にはガイドマップを作成する予定であり、昨年度には『西条地歴ウォーク(レタープレス社)』も出版されています。
こちらもぜひお手を取ってみてください。
・研究室ごとのゼミ
自分の研究について指導教官や他ゼミ生と議論する場です。
自分の視点では思いつかない意見を頂けるため、後の研究活動を進めるにあたって非常に有意義な時間です。
他ゼミ生の専門的な発表も聞くことができ、研究へのモチベーションが上がるよい機会です。
研究とは一人で黙々と行うのではなく、指導教官や先輩・同期の教えを取り入れながら創るもの、ということを実感しています。
最大の理由は「就職後ではできない学びを2年間経験したかったから」です。
私が大学院進学を決めたのは教育実習が終わった学部3年の冬のことでした。学部時代にフィールドワークやワークショップ等に参加し、あと2年間広く深く学べたらいいなあと思い始めたのがきっかけです。
それからは学部卒と大学院卒の給与の違いを調べたり、先輩から話を聞くなどして進路決定の材料を集めました。
以上のような様々な要素を天秤にかけた結果、大学院進学を第一目標としました。
現在は研究のみならず、周辺学校への教育活動など幅広く学ばせてもらっているため非常に有意義です。
今年度の教員採用試験を受験し、ある自治体で高校地理教員として採用が決定しました。
自治体によっては大学院修了まで採用を待ってくれます。
期限が1年や2年、もしくはその制度がない自治体まで様々ですので、該当しそうな方はまず調べてみることをお勧めします。
私の場合は大学院進学時点である程度進路は決定していましたが、周りではインターンシップへ参加するなどして進路決定の足がかりとしています。
高校生の皆さんは①将来的に何で稼ぐか、そのために②大学・学部はどこにするか等で悩んでいるかと思います。
前提として、教育学部を選択したからといって全員が教員になるわけではありません。
学部単位であればおよそ半数程度です。
逆に別の学部から教育実習に行き教員免許を取得する人もたくさんいます。
要するに、②の選択は①を確定させるものではありません。
皆さんも紆余曲折ありながら大学を決定すると思いますが、そこはゴールではなく新たに将来を見据えていくスタートです。
受験勉強で大変な中かける言葉として適していないかもしれませんが、視野を広げ自分の可能性を広げていくという姿勢を常に持ち続けてほしいと思います。
大学院という進路を選択した人たちに、高校から院を志願していた人はほとんどいません。
皆さんが思い描く将来を実現するためにこの社会認識教育学領域が力添えできるのであれば、その時はよろしくお願いいたします。