大学院生(博士課程後期)の一日 (中村 光則さん) 2013年現在

中村さんは、毎日どのような生活をしているのですか?

現在は、職場からの同意をいただき、仕事をしながら学生として研究をしています。仕事は、広島県教育委員会の文化財課で文化財保護主事をしています。史跡・名勝・天然記念物・世界遺産などの保護に関わる事務を担当しています。例えば、宮島、広島城、原爆ドームなどを扱っています。その合間を縫って、指導教員の由井先生からご指導をいただき、地理教育の研究を進めています。

中村さんは、これまでどのようなお仕事をされてきたのですか?

今年で、在職21年目になります。その間、様々な校種等を経験してきました。小学校、知的障害や聴覚障害の特別支援学校、高等学校、20代の頃には教員派遣で埋蔵文化財センターでの発掘調査も経験しました。聴覚障害の生徒を担当した時には、手話で中学社会科や高校地理歴史科の授業をしました。また、三原高校の定時制に在籍していた時に、博士課程前期で学ぶ機会をいただき修士論文を書きました。この時は、教職高度化プログラムといって、自分の実践を通して研究をするコースに所属していました。その後、県の教育委員会への異動と同時に、博士課程後期へ進学しました。多くの先生方とは、全然違う道を歩んでいるので、参考にならないかもしれませんね(笑)。

どのようなテーマで研究をされているのですか?

研究テーマは、高校地理教育におけるESD授業の開発です。ESDとは「持続可能な開発のための教育」といわれ、言い換えると「持続可能な社会を担う子どもたちを育てる教育」です。地理の授業では、社会の課題を知ることだけで終わるのではなく、未来を見つめ、考え、・行動できるようになることが大切だと思っています。授業では、主に、地域調査や地域学習などを扱っています。このような行動を大切にする授業は、小学校ではよく実践されています。それを高等学校の地理でもやってみようということです。私は、地理の授業を通してESDを実践するということにこだわっています。それは、地理の内容や技能そのものが持続可能な社会の構築と密接に結びついていると考えているからです。

社会系コースを目指す高校生へメッセージをお願いします。

社会科の教員を目指すみなさんでも、社会科は暗記科目というイメージがあるかもしれません。でも、社会科はそんなもんじゃない。これを忘れないでほしい。社会科の奥深さを大学で知ってほしい。社会科の教員は社会科の授業を通して、将来、社会を変えられる(より良くできる)ような子どもたちを育てられるんだという思いを持って入ってきてほしい。社会科は、知識を暗記させるのではなく、よりよい未来をつくっていける子どもたちを育てることができるというのが面白いと思います。

大学院への進学を希望している学生(教員)へのメッセージをお願いします。

教科書通りに教える授業で行き詰まっている先生方には、是非来てほしいです。これまで、自分がやってきた授業実践を理論的に意味づけることが、不安の解消につながるかもしれません。「なんで社会科なんてやらなくてはいけないの?」という子どもたちに直面して自信がなくなったとき、理論を学ぶことはみなさんの助けになるかもしれません。少し立ち止まって、自分の実践の理由づけができたら、その後の教員生活も有意義になると思います。