大学院生(博士課程前期:地理学)の1日 (頼富収吾さん) 2018年現在

香川県出身

大学院での授業について教えてください。

 大学院では専攻である地理学に関する授業を中心に履修しています。地理学の専門的な知識に関する授業や地理教育に関する授業があります。ここでは、本年度履修している4つの授業を紹介したいと思います。 1つ目は、海外の地理の教科書分析です。イギリスやドイツといった国々ではどういう手立てで地理を学習していくのか、実際の教科書を翻訳し、分析を行っています。諸外国の地理教育について学ぶことができるため、日本の地理教育の特徴や課題、また今後どのようにしていくべきなのかについて考えることができる授業となっています。 2つ目は、自然地理学に関する授業です。日本や世界の地形はどのようになっているのか、なぜそのようになるのかを参考図書の輪読を行いながら学習しています。地図、図表の読み取りや作図を行って、地理的な技能を磨きながら、高校の教科書などではあまり取り上げられることのないマニアックな地形の成り立ちについて学ぶことができます。 3つ目は、フィールドワーク中心の授業です。主に広島大学のある西条町をフィールドとして、測量したり聞き取り調査をしたりしてフィールドワークの手法を身につけると同時に、大学の周辺の地形や歴史、人々の暮らしについて学んでいます。本年度は、西条町に関して地形や文化、歴史など様々なテーマで調査し、ガイドブックとして出版することを最終的な目標としています。例えば西条とカープのつながりに関してや、西条に昔あった城について、ユニークなものとしては西条にある危険な下り坂について調べているという人もいます。 4つ目は、ゼミの授業です。指導教官の先生のもと院生それぞれが自分の研究に関して報告するという形式です。研究を進めていく中で何をしていく必要があるのか、調査して得られたデータ・結果に関してどのような課題があるのかなど研究に関する様々な指摘を指導教官の先生だけでなく、ほかの院生の方からもしてもらえます。今まで自分一人では思いつくことのできなかった視点や考え方などを学ぶことができ、今後自分がしていかなければならないことが明確になります。研究というと一人で黙々とやっていくイメージがある人もいると思いますが、実際には多くの人から助言をしてもらうことで、今後の課題が明らかになり、より質の高い研究ができるのではないかと思います。以上4つが今大学院で履修している授業とその内容になります。 学部の時よりも学生が主体となって授業が進んでいき、自発的な学習形式になるため、ただ単に教えられるだけの講義形式よりも深く理解でき記憶に残りやすいと思います。ここでは、地理学に関する授業を紹介しましたが、ほかにも倫理学や経済学など社会科に関する分野の授業が多くあります。どのような授業なのか興味のある方は是非研究室に来て院生に質問してみてください。

大学院での生活について教えてください。

 私は大学院で学生として勉強しながら、近隣の公立中学校で非常勤講師として社会科を教えています。大学院の授業は月・水・木の午後からあるので、それ以外の月曜・火曜の午前、金曜の全日に中学校に出勤しています。大学院での授業は先生から教えてもらう講義形式ではなく、学生が調べてきたことを発表する形式であるため、授業に向けた準備をしておく必要があります。一方で中学校での授業の準備としてプリント作成や授業構想もしておかなければなりません。そのため平日に関しては大学から自宅に帰るのが遅くなることが多いです。土日は中学校の部活動の外部コーチとして大会の付き添いをしたり、地域のサッカーサークルにも入っているのでその練習や試合などがあります。  これが私の一週間の生活サイクルになります。学部生の時よりも多忙になりましたが、充実しているなと感じることが多いです。なぜなら自分のやりたいことがすべてできているからです。大学院では興味関心のあることが勉強できますし、非常勤講師として実際の学校現場で授業力を磨きつつ、現職の先生方のご指導やアドバイスを頂けるので大変勉強になっています。学生と非常勤講師を両立していくことは大変ですが、教員になるという目標のための勉強であると考え日々頑張っています。

大学院に進学しようと思った理由を教えてください。

 大学院進学に関しては、学部生1,2年の時には少し興味がある程度でした。そこから進学しようと考えるようになったのは学部生3年の時でした。教育実習で実際に授業をしてみて、社会の授業の教材研究の大変さ、教え伝えることの難しさを感じ、まだまだ教師としての知識・技能が不足していると痛感しました。そこで、学部よりもさらに深く学習することができる大学院進学を決めました。教員になるための課題を、教育実習を通して見つけ、大学院2年間でその課題に真剣に取り組んでいきたいというのが、私の大学院進学の理由です。

大学院修了後,将来どんな教師になりたいですか。

 生徒にとって面白い授業、役に立つ授業とは何なのかを生涯考えられる教師になりたいと考えています。ただ単に効率的に学習するだけでは、受験を意識した塾や予備校と変わりません。では学校だからこそできる社会科の授業とは何か。それは生徒が将来社会に出たときに役立つ、生かされることを教えることだと考えています。そのために常に社会の変化に対して柔軟に対応し、生涯勉強し続ける必要があります。また社会科を苦手とする生徒は多くいます。そのような生徒に対しどのようにして社会科に興味を持ってもらえるか、面白いと思ってもらえる授業をするか。これもまた生涯考え続け勉強しなければなりません。面白い、役に立つ授業をしていくために、社会の変化に対して柔軟に対応し、生涯学び続ける教師になりたいです。

高校生へメッセージをお願いします。

 どこの大学に行きたいかすぐに決められる人は少ないでしょうし、まして大学院にまで進学したいという人はさらに少ないと思います。実際自分自身もまさか大学院に進学するなんて高校生の時には思いもしませんでした。高校生の方に大学院へ是非進学してくださいと簡単に言えませんが、本当に学びたいことが大学での勉強の中で見つかれば、その時は是非大学院に進学してもらいたいと考えています。だからこそ、まずは今の段階で勉強したいこと、将来なりたいことを真剣に考えて、どこの大学・学部に進学するかをじっくりと考え進路を決定してほしいです。その延長線上に大学院への進学が自分にとって必要ならば是非大学院へ進学してください。皆さんが希望する進路を歩めるよう応援しております。

大学院進学を考える大学生に向けてメッセージをお願いします。

 大学での学びを通して、興味を持った分野や勉強してみたいことが見つかり、大学院へ進学したいと考えている人もいるのではないでしょうか。また教育実習など実際の学校現場を経験してみて、教師になるうえでの課題を見つけたという人もいると思います。大学院では学部の時には学べなかったことや、学んだことをさらに深く学んでいくことができます。また大学院の先輩の研究や普段の会話だけでも、勉強になることはたくさんあり、新たな視野を獲得することができます。大学院と聞けば敷居が高いイメージがあると思いますが、そんなことはありません。面白い分野の研究をしている人もいれば、おやじギャグを授業の発表中に取り入れて妙な空気にする人もいます。個性の強い人がたくさんいる中で一緒に研究してみませんか?興味のある人は是非一度研究室に来てみてください。皆さんが大学院に進学することを楽しみにしております。