社会認識教育学特講Ⅰ (川口広美 准教授) 2017年現在

大学院ではどのような授業を担当されていますか?

今年度(2017年度)に着任しました。大学院では社会認識教育学特講などを担当しています。今年度の特講では、イギリスの歴史教育について、教員養成で用いられているテキストを中心に関連する論文をしっかり読みながら、「イギリスの歴史教育はどのような目標で行われているのか?」「教師はどのように授業を作っているのか?」を明らかにしていくことを目的にしています。 

これまで、私は国内外の高校や中学校などにフィールドワークに訪れ、教師や生徒がどのように社会科授業を作っているのか、それをどのように受け止めているのか、などを調査してきました。調査の結果、公民や地理と比べても、歴史教育は特に知識内容を網羅するという学習から抜け出すことは難しいということが明らかになっています。

イギリスは、かなり早い段階から知識内容や結果を伝達する歴史教育ではなく、社会の担い手を育成する歴史教育というのを意識してきました。今度の日本の学習指導要領で「歴史的な見方・考え方」として提示されている「推移」や「比較」といったものは,イギリスの歴史教育で重要概念として提示されてきたものでもあります。こうした考え方がどのようにして生まれてきたのか、実際にそれがどのようにして適用されているのか、を院生と一緒に考えています。

元々私自身はイギリスのシティズンシップ教育を専門として研究してきており、歴史教育は必ずしも中心として研究してきた訳ではないのですが、自分自身の研究領域を広げていくためにも、新しいトピックにチャレンジしています。

大学院の授業ではどのようなことに心がけておられますか?

私が大学院の授業で心がけていることは2点あります。

第1は,学問的に新しいトピックを扱うことです。学部の授業では、基本的にこれまでの社会科教育学で明らかになってきた結果(知識や方法)を習得するということを重視しています。それに比べると、大学院の授業は、プロジェクト型です。まだ学問的に十分に明らかになっていないトピックについて、じっくり関連する本を読んだり、データを集めたりしながら、共に追求していく。共同研究をするイメージで、1つのトピックを追求しながら、学問的な知見や方法論を獲得してもらいたいと思っています。

第2は、現在の学校の教育実践や教育課題と関連付けたトピックを扱うことです。本コースは,研究者の方法論を習得しながら、実践者としての資質も向上させるということも意識されていると思います。そのため、単に学問的に新しいトピックを扱うというだけでなく、実践的な意義もあるものを選びたいと思っています。

大学生に対してメッセージをお願いします!

広島大学の良さは、研究する上での多様なソース(情報源)が存在することです。熱心な同級生や先輩や後輩。教育にも研究にも熱心な教員。豊富な文献。そして、社会科教育を超えて、多様な分野での国内外の研究にもアクセスしやすい環境です。ただし、大学院の授業は 文字通り”learning by doing(行為しながら学ぶ)”です。待っていても、ソース(情報源)はリソース(材料)にはなりません。

学部の授業を受けながら「なぜ、こんなことがいえるんだろう?」「どうやってこういう内容が出てきたのだろう?」「違うんじゃないのか?」と疑問を持った方、主体的に新しい社会科のあり方を考えたい方、是非門を叩いてみてください。是非一緒に考えていきましょう。