学習材開発セミナー (草原和博 教授) 2014年現在

大学院の授業で一押しのものはなんでしょうか。

学習材開発セミナーです。

これは文字どおり「学習材」をつくるセミナーです。「学習材」とは何かというと、従来の教科書とはイメージの異なる、先生が使う指導書のようでもあり、生徒の使う資料集でもあるような、考える素材やヒントがたくさん隠された、社会科学習を支援する教材キットです。学び手=生徒にとっても、教え手=教師にとっても、よく分かって、好奇心が沸き立ち、使い勝手の良い教材を提案していく。

イメージは10年後を見据えた教科書の開発です。これからの社会で求められる資質とは何か、子どもの能力をもっとひきだす指導法・カリキュラムとはどういうものかを、世界の理論研究や実践動向を見据えながら明らかにし、そのコンセプトを教材に具体化していきます。

具体化した教材は、現場の先生に使ってもらいます。教師の印象や受けとめ方、使われ方や使い心地、分かりやすさなどについてデータを集め、その結果にもとづいて改訂し、新しいバージョンを開発することに努めています。

もう紙媒体での開発は止めよう。時代も時代だし、デジタル媒体に移ろうかな(笑)。

この授業は自分のしたい授業のための学習材を開発するちからを育成するのでしょうか?

このセミナーの第一義的な目標は、未来に向けた新しい教材を開発し、それを学会や出版社、文部科学省や教育委員会に提案、提言していくことです。大学院の授業は、研究活動そのもの。セミナーへの参加を通して、日本の社会科研究の一翼を担ってもらいます。知識や能力を身につける学部の授業とは、まったくイメージが違います。知識を生み出す場を経験するのが、大学院の授業です。

第二の目標は、教師一人ひとりが願う「こんな教育をしたい」「こんな子どもを育てたい」という思いを実現していく教科指導の開発力をつけることです。学校や子どもが直面している課題を考慮して、社会科の目標を立て、それを実現するカタチやフォームをつくりあげる。そういうことが自立的に成し遂げられる、カリキュラムや授業の「デザイナー」を養成したいと考えています。

大学生に向けてメッセージをお願いします。

社会系コースに入学するということは、「先生の先生」を目指すということです。

つまり、学校や地域でリーダーシップをとることのできる先生、先生方から尊敬される熟達した教師、先生方のトレーナーとなる教育委員会の指導主事、先生方のルールブックとなる学習指導要領をつくる文部科学省の調査官、そして未来の先生を養成したり、先生の仕事を研究する大学の教授。

こういう色々な意味で、「先生の先生」になるための知識と能力を養成してくれるのが、本コースの魅力です。社会系コースは「先生の先生」になるための教育をしています。普通の先生になりたくない人は、ぜひ社会系コースにきてください、と言いたいですね。