社会認識教育方法学特講Ⅲ (棚橋健治 教授) 2013年現在

大学院ではどのような授業をされていますか?

私は社会認識教育方法学Ⅲをはじめいくつかの授業を担当しています。この社会認識教育方法学の授業では、ここ数年は世界規模で行われている市民性に関する調査の分析を、大学院生たちと一緒に行っています。 

人は、社会を構成する動物であり、社会は、その構成員である人々に対して、構成員としての資質や能力を求めます。市民性とは、学校や地域、国といった様々な規模の社会の中で、その社会の構成員の一人として求められる資質や能力のことです。市民性の捉え方は、社会、文化そして教育の考え方によって多様であり、統一したものはありません。社会系教科は市民性教育と関係が深い教科ですが、市民性ということについても、また社会系の教科が市民性の形成にどこまで関わるのかについても議論が分かれます。そこで、世界規模で行われている市民性調査を分析し、共通点と特徴を見出すことで、世界では市民性をどう捉えているのかについて考えています。さらに、他国の社会科の授業では、どのように扱っているのかを調べます。それによって最終的には日本の社会系教育では、市民性のどの部分に関わるべきか、どの部分には関わるべきでないか、何を教えればよいかという示唆を得られると考えています。

最後に受験生/高校生に向けてメッセージをお願いします。

社会系の教科を学ぶ・教えるということに関して、興味や問題意識をもってください。地理や歴史の物知りになれば、先生になれるわけではないのです。今、受けている地理、歴史、公民の授業を、「どうしてこんなことを勉強するのだろう」「こういうことを学ぶと、社会の何がわかるようになり、何ができるようになるのだろう」「楽しい社会の授業とはどんなものだろう」などと、考えてみましょう。そうすることで、大学に入ってから社会認識教育を学ぶ中で、今まで自分が受けてきた社会科の授業よりも、もっとよい授業ができるようになっていくでしょう。そして、広島大学の大きな特徴は、中学や高校の先生になれるだけでなく、博士号をとって、日本全国の大学で、そういう先生を育てる大学教員・研究者になる道もあると言うことです。あなたが、将来の社会系教科の先生のあるべき姿を研究し、実際にそういう先生を育てることも可能なのです。