社会科(公民系)カリキュラムデザイン論  (川口広美 准教授) 2017年現在

川口先生が担当されている教育学部の授業の中で一押しのものはなんですか?

全ての授業に力を入れていますが、特に社会科(公民系)カリキュラムデザイン論をあげておきたいと思います。広島大学教育学部の社会系コース独自の教科であり、私が研究している領域ですので、特に力を入れています。

カリキュラムデザインとはなんですか?

カリキュラムというのは、一般的にも聞くこともあるかもしれませんが、ある教育目標に向かって計画し実施する内容や方法の総体を現します。例えば、水泳のカリキュラムだったら、「クロールが泳げるようになる」という目標の下で、「水に顔をつける」とか「バタ足ができる」とか色々な内容があり、それを組み合わせて順序だてすることで、泳げるようになりますよね?社会科カリキュラムデザイン論も同じで、目標をどこに設定し、どのような内容で、どのような順序で学んでいけばいいのかということを考えます。

特に、社会科の場合、目標は「平和で民主的な社会の形成者を育成すること」という非常に抽象的なものなので、じゃあまず「平和で民主的な社会の形成者」とはどのような目標になるのかということを考えます。予想されるように、この定義はとても広いです。その上で、どのような内容をどのような方法で学べば、その目標を達成できるのかということを考えなくてはなりません。

カリキュラムデザイン論でも、一時間の授業をどう作るか、ということも含みますが、もう少し広い視点から、社会科という教科をどう作っていくか、ということを中心においています。

その授業はどのようなことをするのですか?

この授業では、実際に色々なカリキュラムを自分でデザインできるようにする、ということを最終的な目的にしています。

まず、1つ目は、現状の日本の社会科の教科のあり方を示している学習指導要領や教科書のあり方を考える段階です。ここでは、現在と過去、国内外の多様なカリキュラムを事例にして、今の教科のあり方や教科書のあり方は絶対的なものではなく、多様なものがありえるし、実際にあったのだということを学びます。それを基に、では今後の社会科の学習指導要領や教科書はどうあるべきなのか、ということを考えてもらいます。

2つ目は、学校現場における社会科のカリキュラムをどう作っていくかということを考えます。現在の学校現場は多様で、色々な子どもたちがいますし、地域のニーズも多様です。そうした中で、どのような内容を、どのような順番で教えていけば、最も子ども達にとって意味のある内容になるのか、ということを考えます。第一段階で学ぶ、学習指導要領や教科書はあくまでも授業を作っていくうえでの基盤の1つであり、それを教師としてどのように読み取り、再構成していくかということを考えています。最終的には公民的分野のカリキュラムを班ごとに作ってもらいます。

私は、これから先は、社会の多様化を背景に、学習指導要領や教科書をただ受け入れるだけではなく、教育の現場に立っている教師自身が読み解き、考えていくことがますます必要になってくると感じています。そのため、授業では、実際にカリキュラムデザインをする力をつけてもらうために、グループワークを用いてその場で考えさせる授業を行っています。

高校生に向けてメッセージをお願いします。

大学を選ぶ基準は色々ありますが、私は「人」「モノ」「コト」が揃っているかが重要だと思っています。。「人」は教員と友人、先輩や後輩。「モノ」は資料や文献にアクセスできる環境。「コト」は授業や授業外の多様なイベントです。この3つが充実していれば、自らの成長に繋がっていくからです。

正直、教員免許を取るだけならいろいろな大学があると思います。ですが、広島大学教育学部の、社会系コースには社会科教育の先生が3人いるということもありますし、資料や文献についてもかなり充実していると思います。また、国内外の最先端の研究成果が発表されるセミナーなども多く、自分が積極的に参加すれば、色々な情報に触れられる充実した環境が整っています。あと、私自身が社会系コース出身なのですが、コースには色々な県の人たちが集まってきますし、卒業後も繋がっていることも多いです。このコースを通して、人と人とのネットワークが全国にできることも大きな財産になると思います。

是非、未来の社会科を作っていきたいと思われる高校生の方、いらしてください。