地理学概説Ⅱ (熊原康博 准教授) 2013年現在

熊原先生の一押しの授業は何ですか?

 2013年10月から広島大学に着任したばかりですが、主に自然地理学を教える必修授業の「地理学概説II」には力を入れようと思っています。

具体的にはどういう授業を構想中ですか?

考えていることは、3つあります。

1つ目は、地形と人の関わりを身近な事例をもとに理解してもらうことです。前の大学でも教育学部で授業をやっています。私自身は、ヒマラヤや日本の活断層について研究しています。ただ、将来教員になる学生の多い教育学部の授業で、活断層のことばかり話しても興味をもってもらえないと思っていました。ですので、人と自然、特に地形とのかかわりについて具体的な事例、しかも身近な地域の事例を示しながら、授業をやっていました。広島大学の授業でも、単に地形の成り立ちや特徴を教えるだけでなく、東広島や広島の事例も取り入れつつ、地形と人との興味深い関わりが、実は身近な足元で生じていることを理解してもらう授業をやりたいと考えています。それが、教育学部の社会系コースに自然地理学がある理由だとも思っています。

2つ目が、地理学の武器である「地図」を活用することでしょうか。授業では、学生自身で色塗りなどの地図作業をして、ある物事の地域な違いを気づき、なぜそうなるのかを考えること、逆に学生自身が持っている情報を地図上に表現して、視覚的にわかりやすい地図を作ることなどを通して、教育現場で地図を使うことの良さを実感してもらいたいと思っています。大学の授業で地図を使った授業をやったことを、将来教員になった時、授業の中で取り入れてみようと思ってもらえたら、うれしいですね。

3つ目がフィールドワークを授業で取り入れることです。フィールドワークは単なる散歩とは違います。五感を通じて、その地域特有の特徴やあるいは課題を自ら見つけていく作業です。もちろん、地図を活用したり、地元の方にも尋ねたり、地形を計測する技術も必要ですので、フィールドでしっかり学んでもらいます。フィールドワークを通して、本やインターネットだけではわからない、人々の暮らしの息づかいや地形のダイナミックさ・面白さを肌で感じてもらうことで、フィールドワークの重要性を理解してもらいたいです。

高校生に向けてメッセージをお願いします。

大学で学ぶ地理学は、高校までの地理の勉強のようにただ暗記するだけでなく、広い視野で見つめ、そしてフィールドに出て、多くの地域との比較を通して、共通性や相違性を考え、その理由が何かを考え出すことです。
この社会系コースで、自然地理学を学んで教員をめざすということは、専門をしっかり学んだ教科の先生になれるのです。それこそが、専門分野の知識や技術を持つ自信をバックボーンにして、生徒たちに「生きている地理」を教えられる、今の教育現場で求められている先生だと思うのです。