大学に入学する前から高校教員になろうと決めていました。途中で、研究にも興味を持ち、大学院への進学も考えましたね。でも、教員採用試験に合格し教員の道に進むことになってしまいました。今年で高校教員になって25年目です。その間、現職教員の派遣で博士課程前期へ入学し、国際協力研究科の博士課程後期まで進みました。具体的には,中山修一教授の下でアメリカ合衆国の地理教育の研究をする機会を得ました。
現在、在籍している安古市高校へは、平成18年に赴任しました。広島県の中でも受験指導に力を入れているトップリーダーハイスクールの1つです。担当科目は、主に地理ですね。部活動は、ダンス部です。
教員をやっていて、一番の醍醐味はホームルーム担任だと思います。でも最近は、主任(今年は3学年主任)をして、なかなか担任を持たせてもらえないですね。自分のホームルームがあるのとないのでは、運動会や文化祭などへの思い入れも変わります。教員をやっているとたくさんの仕事があるので、毎日、学校から帰るのがどうしても遅くなってしまいます。でも、翌日の朝、ホームルームで生徒たちの顔を見ると、昨日の疲れも忘れてしまいますよ。今では授業で生徒と会うことが最大の楽しみです。
高校教員になった当初から、生徒の興味・関心を引き出すことに力を注いできました。興味深さを感じることができれば、生徒は自ら学習を進めていけると考えていました。初任校では試行錯誤の毎日で、若さで体当たりといった授業でしたね。
その後大学院に派遣され、アメリカ合衆国の地理教育について研究したことから、地理を学ぶ必要性を生徒にも理解してもらうため、地理的な見方・考え方や地理的技能を重視する授業に変化していきました。授業の最初は、生徒の驚きや知識を揺さぶる資料を用いて、何を学習するかを明確にして導入としています。知識・理解、思考・判断、技能習得と表現を分け、授業を展開しています。私の授業の特徴は、思考・判断後にグループや席の近い仲間で話し合う時間をもつことにあるでしょう。生徒同士で話し合うことで、他者の見方や考え方と自らのものを比較し、多様なアプローチを身に付けることができるようです。話し合い後は、必ず何人かの生徒に発表してもらいます。
中途半端な研究授業とその改良をたくさん繰り返していますが、例としてあげるなら工業立地の授業ですかね。導入として、日本のいくつかの工業種における主な工場の立地を示した図を用います。ここで何を学ぶかを明確にし、生徒の知識を揺さぶりながら見方と考え方を身に付けてもらいます。展開では、工業発展の歴史、工業立地論、工業の指向について基礎的な知識や技能を習得させ、その確認として事例(ビール工場の移転)を用いてグループ学習を行わせ、最後に発表してもらっています。
これは、どう答えたらいいかな。私は、地理を専門としていてゼミは中山修一先生のところを選びました。広島市内を歩きまわって、あらゆるところを測量しました。でも、3年生後期から4年生前期に先生が海外に留学なさり、その間は世界史の先生のゼミに入れてもらって、卒業研究をしました。今のように、メールなど無かったので、海外の先生に手紙を送って指導を受けたのが懐かしいです。卒業論文では,広島大学の名誉教授でいらっしゃった米倉二郎先生からもご指導を頂き,地理教育についてまとめました。
大学に入って、初めて受けた授業に感銘を受けて、社会科教育学のおもしろさを知りました。担当は、森分孝治先生でした。始めはまったく分からず、受講生みんなが教授に厳しい批判を受けました。特に、指導案を作成する課題では、うまく作ることができず、悔しい思いをしたことを覚えています。それから、先生が良いという指導案と自分たちの指導案は、何が違うのかを同じ研究室生と話し合ったりしましたね。やはり、教員にとって一番大切なものは、授業力であると今でも思います。この時、学んだことが今でも役に立っていますね。
社会系コースのネットワークですね。これは、とても大切にしています。このコースの多くの学生が教師になっています。先輩・後輩も含めて全国各地に卒業生がいるので、いろいろな場面で助けてもらうことがありますね。同じ学校でも、学校外の教科研修等でも必ず同窓生がいます。県外や国の教育に関する情報についても同窓生がいるので、本当に助かりますね。例をあげれば、現在社会系コースにいらっしゃる草原和博准教授には、教科のことだけでなく私の勤務校全体でお世話になっているように、教社(教育学部社会系コース)のネットワークで、様々な情報交換をしています。やっぱり、そこが教社のいいところだと思う。
もう一つは、授業に関するこだわりですね。他から見れば大した授業はしていないのでしょうが、教社出身の私たちが決しておろそかな授業はできない自負があります。教育において最高峰といえる大学の先生方から学んだ素晴らしい教育学、内容学、方法学を、私なりに大切にしています。「授業では誰にも負けない」という思いで、生徒にわかる・できる授業をすることが使命であると感じながら毎日の授業に臨めています。
社会系コースは日本で最高峰の教育学部にあります。教育に関する書籍や先行研究と教授をはじめとする先生方の素晴らしさは、他に並ぶものがないでしょう。
ただ、高校生のみなさんが想像する教育と、大学で研究する教育には大きな違いがあるかもしれません。私たちも大学1・2年生の時には、そのギャップに大いに悩まされました。しかし、それは社会系コースの専門の授業を学ぶと、どこかで一蹴されます。授業をつくることに魅了され、どうすれば美しい授業ができるのかを探究するようになるはずです。学生時代、私たちもお酒を飲みながら、頻繁に授業論を交わしていました。
教師にはさまざまなタイプがあります。しかし、教師が勝負する場所は授業なのです。広島大学大学院教育学研究科社会認識教育学講座(社会系コース)で真剣に学べば、授業で勝負できる教師になることができるはずです。私の働く広島県だけでなく、全国どの都道府県でも授業改善は最優先の課題とされています。ぜひ社会系コースに入学し、学び、即戦力として活躍できる教師になってください。どこかでお会いできることを楽しみにしています。