卒業論文では、「近世新田開発の地歴融合教材の開発—東広島市柏原地区を事例に」という題目で、水が得にくい段丘面上にある、東広島市柏原地区の新田開発の過程の復元を、古文書及び古絵図の解読に基づく歴史学的手法と、現存する水利施設の配置や地形の分析に基づく地理学的手法を統合して行い、その結果から地歴融合教材を開発することを考えています。
使用した古文書は、広島県立文書館に寄託されている柏原地区の絵図と『卯年野取之寄』です。どちらも歴史学の下向井先生の協力を得て解読を行いました。絵図は水利施設や百姓の名前が記されており、新田開発の計画や水利施設の建設過程を明らかにすることができました。『卯年野取之寄』は入植した村人の名前と各年の田畑の開墾面積が記された詳細なものであり、絵図の情報と合わせてそこから新田開発の詳細な経過をグラフ化しました。一方、地理学的な手法としては、本地区の地形が地理院地図の標高データや断面図から、扇状地性の段丘であることを明らかにし、水利施設を地図化しています。また、古文書から得られたデータを、絵図を元に地図に落とし込む作業を現在行なっております。これらの調査により、歴史史料の解読を通じて明らかにした開発過程を現実に即して検討することが可能となります。
一方、教材開発については、上記の解明から、江戸時代の新田開発という歴史的視点と、水が得難い段丘面の土地という地理的視点を考慮して、中学校、高等学校で教材として活用できるものを考えています。
(4年 浅井詩織)