広島大学は,INEI(International Network of Educational Institutes)に加盟しております(https://www.hiroshima-u.ac.jp/ed/inei)。INEIとは,教育学に関する実践と成果を集約することで国際的な教育の発展を目指す教員養成機能を持つ研究大学のネットワークであり,現在11カ国の大学から構成されています。
INEIでは定期的に国際シンポジウムが開催されており,日本時間の4月16日の午後10時から17日の午前3時にかけては,「Citizenship, Human Rights, and Social Justice Education: Facilitating Positive Change Through Theory and Action」と題する国際シンポジウム(アメリカ合衆国のウィスコンシン大学マディソン校主催)がZoomを活用して行われました(https://web.cvent.com/event/bcc9096f-d54f-4d47-9f4c-975381eaccbe/summary)。
本学にはポスター発表とラウンドテーブルに各3名の推薦枠が与えられ,本コースからは,小栗優貴さん(博士課程後期3年)と久保美奈さん(博士課程後期2年)がポスター発表,玉井慎也さん(博士課程後期1年)がラウンドテーブルに招待されることとなりました。
本シンポジウムでは,9名の大学教員による基調講演,「Citizenship」「Human Rights」「Social Justice」の3つの部会ごとに大学院生によるポスター発表とラウンドテーブルが実施されました。
基調講演では,本学を代表して本コースの川口広美准教授が「Listening to others, and listening to myself: A case study from Japan」と題した発表を行いました。フロアからは,発表の中で触れられていた日本の社会科教員が持っている「正義(Social Justice)」観の多様性に対するコメントがチャットで寄せられていました。
ポスター発表では,小栗さんが「Impacts of Hidden Curriculum on the Citizenship of Junior Highschool Students in Japan」,久保さんが「Difficulties of Social-Justice-Oriented Teachers in Teaching Social Studies」と題した発表を行いました。
ラウンドテーブルでは,玉井さんがウィスコンシン大学マディソン校のLi-Ching Ho先生や各大学の大学院生とともに,各地域の市民性教育の文脈の違いを議論しました。
本シンポジウムの最後には,公的論争問題学習の研究で知られるウィスコンシン大学マディソン校のダイアナ・ヘス教授やデモクラティック・スクールの研究で知られるマイケル・アップル教授による講演もあり,参加した本コースの大学院生にとって,刺激的で貴重な機会となったようです。
以下,本シンポジウムに招待された大学院生のリフレクションです。
小栗さん:私が持っている「市民性教育」の世界地図は狭いことに気づかされました。一方で,私が発表した日本の市民性教育の特質に驚く研究者の反応を見て,その地図の一部を構成できたことに気づき,嬉しく思っています。引き続き航海を続けたいと思います。
久保さん:私にとって,英語を用いて海外の研究者へ研究成果を伝えること自体が初めてのことでしたので,非常に良い経験となりました。また社会正義というトピックでの発表でしたが,日本では関連研究が少ない中,ポスターセッションにて数々の海外研究者の試みと出会い,私には思いつかなかった視点や自身の特有の試みなども発見でき,研究を省みる良い機会となりました。
玉井さん:INEIの国際シンポジウムは,日本の市民性教育の特質や課題を相対的に実感できる貴重な時間を私に与えてくれました。小栗さんや久保さんの背中を追って,私も国際舞台で自らの研究成果を発表できるよう挑戦を続けていきます。
(文責:小栗優貴,久保美奈,玉井慎也)