大学院生主催セミナー「困難な歴史(Difficult Past)をいかに教えるか―FHAO(Facing History and Ourselves)を事例に―」を行いました

 2020年11月13日18:30~20:30に,本講座のOBでもある岐阜工業高等専門学校准教授 空 健太先生に、「困難な歴史(Difficult Past)をいかに教えるか―FHAO(Facing History and Ourselves)を事例に―」と題する講演をして頂きました。本セミナーは、本講座大学院生主催でオンラインにより行いました。

 近年、歴史教育研究で注目されているテーマの1つに、困難な歴史(Difficult Past)があげられます。困難な歴史とは、過去の暴力や抑圧をめぐる歴史をしめします。そのため、これまでの歴史教育で提示されてきた国家のストーリーや、平和や寛容といった当該国が重視している価値・規範と相反するもので、歴史教育の中ではあまり取り上げにくいものとされてきました。しかし、近年、こうした困難な歴史を歴史授業の中に取り入れることで、従来の1つのストーリーを伝達する歴史教育からの脱却を生徒自らで行える教育的意義があるのではないか、と指摘され、注目されています。しかし、「困難な歴史」はその名の通り、教室空間にどのように取り入れること自体が難しさを伴います。そのため、どのように取り入れているのか、教師はどのようにふるまっているのかについて見識を深めたいとかねてから考えておりました。
 こうした問題意識の下、本セミナーは、教師が一連の困難な歴史をどのように教室に取り込み、子どもたちが学んでいるのかについて理解することを目的として行いました。本セミナーでは、空先生が昨年度在外研究で携われたマサチューセッツ州ボストンで活動を展開しているFHAOを事例にご講演を頂きました。講演では、①FHAOとはどういう組織か、②FHAOのカリキュラムはどのような構成か・どのような特徴があるか、③実際の授業はどのように実施されており、どのように教員が授業を実施する上でのサポートが行われているか、④FHAOに関する研究課題とは何かを紹介・解説していただく形で進めました。

その後、質疑応答・意見交換が行われました。その中では、FHAOの教育目標や教育構成原理、FHAOが強調する具体的な感情的関与に関する内容、授業実践での評価などについての質問が出ました。意見交換では1時間以上にも及び、参加者全員がコメントするなど、活発に行われました。また、各々の参加者の研究課題に結び付ける質問が数多くありました。

今後もこうした先進的なテーマに取り組む研究者をお招きして、セミナーを開催したいと思います。

(企画・運営・報告:博士課程後期大学院生 小野創太)