日英共同研究プロジェクトの一環で,広島市中区にある広島市営基町アパートで行われた、由井義通教授の調査に同行しました。日英共同研究プロジェクトの詳細は,webサイト(https://ageinghighriseneighbourhoods.org/)に掲載されています。
まず、広島市職員の方から、基町アパートの建設経緯について説明していただきました。戦災後建設された木造公営住宅の建替え、また河川敷に密集していた民間不良住宅の解消を目的として建設された基町アパートは、1956年に始まった中層住宅団地の建設と、1969年から「特定街区」としての整備に伴う高層住宅の建設により、現在のような姿に整備されました。
住宅団地として、かぎられた土地を有効に活用するため高層建築とし、さらに、「く」の字型に建物を連結する事で、日照、通風、プライバシーに配慮した構造となっている点や、歩車分離の動線、屋上に連続したオープンスペースを設けた点、また2戸で1つのユニットを数多く連結することで建築した点など、非常に先進的な構造が見てとれる建築となっていました。
次に、地区の高齢化率、子供の減少、住戸のリノベーションのための計画的空家の増加等の基町アパートの持つ課題と老朽化に伴う基町住宅再整備事業について説明をいただきました。住宅の老朽化に対応するとともに、住戸内のバリアフリー化など居住環境の改善、2戸の住戸を1戸に、また3戸を2戸に住戸結合する事で、居住環境の改善や、ファミリー世帯向けの住戸の設置を行い、入居促進を行なっていました。こうした、再整備事業に合わせて、若年世帯・Uターン世帯・地域貢献世帯や学生に向けて、基町地区の活性化に協力してもらえる入居者を募集するキャンペーンを展開することで、地区の高齢化率や子供の減少、空家の問題を解決しようとされていました。
最後に、実際に老朽化対応・居住環境改善のされる前後の部屋の様子や、住戸結合された部屋の様子を見学し、屋上のオープンスペースの様子なども見学させていただきました。屋上のオープンスペースでは、多くの野菜や草花が育てられていました。
公営の住宅団地に押し寄せる高齢化や住戸のリノベーション事業の課題に対して、現在のニーズに合わせた住戸の創設や、地域活動への参加を入居申し込み資格の条件に組み込むことで、活気のある地域の創生を試みなど、多くの工夫が行われていました。また、一緒に調査に参加された他大学の先生方によると、このような課題を抱える住宅団地は全国に数多くあるとのことで、住宅団地の持続可能性について考えさせられる調査となりました。
M1 原田 歩