東広島市柏原地区にて住民向けの講演会を行いました

6月15日,東広島市南部の柏原地区の集会所にて,柏原水利組合主催による住民向け講演会「柏原地区の成り立ちを考える−新田開発初期の人々の営み−」を行いました。柏原地区では,2016年度から,私や本講座に在職されていた下向井龍彦教授,大学院生・学部生の有志とともに,地形や歴史に関する調査をはじめ(こちら),現在まで継続的に行ってきました。その後,当時学部生であった岩佐佳哉さん(現博士課程前期大学院生)が,本地区の神社の石造物に関する研究を行い,平成29年度東広島市地域課題研究懸賞論文佳作を受賞しました(こちら)。また,昨年度末に卒業した浅井詩織さんが卒業論文の研究において,この地区の古文書を解読して新田開発の進展過程を明らかにし,その成果を用いた教材開発を行いました(こちら)。これを骨子とした論文により平成30年度東広島市地域課題研究懸賞論文優秀賞を受賞しています(こちら)。さらに,学部生向けの授業である「自然地理学実習」では,河岸段丘の地形や地層や,そこでの人々の暮らしを学べるフィールドとして,本地区を対象に行ってきました(こちら)。これまでの調査をもとに,下記の論文をまとめており,現在別の論文も執筆中です。

本地区は大学から車で5分という至近距離にありながら,典型的な河岸段丘の地形と豊富な古文書や絵図の存在から,地理学や歴史学の教育・研究の両方を行える貴重なフィールドとなってきました。この講演会は,これまで調査を快く行わせて頂いたお礼の意味を込めています。講演会では,住民の方が知らなかった新田開発の進展の様子や当時の人々の苦労を理解して頂くと共に,参加者の方から,私の知らない本地区の昔の思い出話や,今後の研究の指針となる貴重な情報を教えて頂く機会となりました。
(准教授 熊原康博)

柏原地区に関する論文(いずれもインターネットからのダウンロードが可能です)

熊原康博(2017):扇状地性段丘地形における新田開発の水利の特徴―広島県西条盆地南部,柏原地区を事例に―.広島大学大学院教育学研究科紀要,第二部(文化教育開発領域),第66号,59-66.

弘胤 佑・下向井龍彦・熊原康博・佐藤大規・岩佐佳哉・竹下紘平・横川知司・氏原 秀・浅井詩織(2018):19世紀初頭の東広島市西条盆地南部,柏原における新田開発初期の進捗過程―「国郡志御用書上帳 賀茂郡柏原 ひかへ」の分析―.広島大学総合博物館研究報告10, 71-90.

岩佐佳哉・熊原康博(2018):広島県西条盆地南部,柏原・三升原地区の神社境内の石造物の同一性とその成立経緯.広島大学総合博物館研究報告10, 103-110.