7月4日に大学院の授業「地理認識内容学特講」(担当:熊原康博准教授)で呉市阿賀南9丁目冠崎地区へ巡検に行きました。冠崎地区では2018年西日本豪雨災害の際に土石流により1名の方が亡くなり、説教所(住職のいない浄土真宗の寺院)を含む10棟が倒壊しました。この被害から1年を前に水害碑が建立され、除幕式が行われたという報道を受けて、その建立目的やその背景、詳しい被害状況についての調査を行う目的で現地へ向かいました。自治会長さんへ聞き取りの結果、説教所があった場所が土砂災害特別警戒区域内に位置し危険であること、再建にかかる費用が捻出できないこと、地域住民の高齢化で持続的な維持管理が難しいことの理由により説教堂の再建を断念したこと、再建しない代わりに水害碑の建立と桜の植樹を行ったことが明らかになりました。また、水害碑の建立目的は碑には刻まれていないものの、犠牲者の慰霊と土石流災害の伝承が目的であることが聞き取り調査により明らかになりました。水害碑には過去に冠崎地区で発生した災害履歴が年表形式で書かれていました。私たちは空中写真の判読から過去の災害履歴を土砂災害特別警戒区域とともに地図化することで過去の被災範囲と住居との関係を視覚的に把握できることを示しました。これらの結果は、熊原准教授との連名で雑誌『月刊地理』に投稿中です。
(M2 岩佐佳哉)