この度、前期の集中講義「平和情報発信演習(戦争と平和の教育学)Ⅰ」が韓国にて行われました。本講義は、金鍾成准教授、草原和博教授、池尻良平准教授の3名が担当し、受講生9名(学部生8名・大学院生1名)・聴講生1名が受講しました。
1日目では、午前中にソウル市の植民地歴史博物館を観覧し、観覧中は日本人学芸員の方より日本による植民地支配の歴史の展示に関してご説明頂きました。また昼食をはさみ、午後には博物館の会議室にて、博物館の成り立ちや展示の集まり方などをご説明いただきました。そのなかで、史料は実際に戦時下の日本から被害を受けていた方々から提供されたものも多く、展示物と展示方法の精査を重ねながら、当時の国内の混乱や被害などを表現されていることをお聞きしました。
その後、10名の学生が3グループに分かれ、グループごとに自分たちはこの博物館の「ラスト・テン・フィート」*をどのようにデザインするのかを検討しました。グループごとに違いはあったものの、大まかな流れは共通しており、自分たちは博物館の展示に対してどのような感覚を持ったのかを共有し、その感覚を踏まえて自分たちはどのようなデザインをするとよいのかを話し合っていました。デザインに関する検討は非常に盛り上がり、本来想定されている時間では収まらなかったため、各グループは夕食後や2日目の集合前などにおのおの集まり、自分たちの「ラスト・テン・フィート」のデザインについて精査を重ねていました。
*「ラスト・テン・フィート」は博物館における展示の最後の10フィート(約3メートル)のことで、博物館において最も伝えたいことが詰まっている展示場所です。


2日目は、1日目午後に検討した「ラスト・テン・フィート」のデザインに関して、グループごとに、他のグループ並びに博物館の関係者の方々に向けて発表を行いました。各グループは共通して付箋を用いて来館者が自分の意見や気持ちを共有できる展示を発表しました。
あるグループは、展示に対して観覧中に感じた、日本人が行ったということへの受け入れがたさと罪悪感などが入り混じった「もやもや」した感覚を共有することで、同様の感覚を覚えたのが自分だけではないことを感じてもらい、精神的に安定しながら日本の植民地支配について熟考することができるデザインを発表しました。また、歴史的な資料や現代への問題提起を行う資料を用いて自分の考えを深めるデザインや日本語と韓国語で一つの大きな問いを示し検討を促すデザインも発表されました。
昼食をはさみ、2日目の午後からは、受講生の発表に対して、博物館の学芸員の方などからフィードバックを頂戴しました。博物館の関係者の方々からは、「新しい発想で興味深い」と嬉しいお声をいただいた一方で、運営面のリアルな事情や博物館のあり方についての深い視点から、たくさんのフィードバックをいただきました。現場ならではの生のご意見に、学生一同とても刺激を受けていました。

2日間を通してのこれらの活動は、受講生にとって、リアルな歴史史料に触れ、博物館の方の生のご意見を頂戴する希少な体験、また異なる文化の体験を通して、現地でしか感じられない生きた刺激を受ける貴重な経験となったと思います。日々変動する社会情勢の中で、歴史的事象の扱い方や異なる歴史認識のすり合わせを行うことが、現代社会にどう活きるのかを、筆者も含めて思索する経験になりました。
(執筆:博士課程前期1年 松本 大空)