本コースの学生が,4つの読書会を企画・実施しました

 令和5年度後期,本コースの院生の野瀬輝さんを中心に4つの読書会を実施しました。

 対象文献は以下の通りです。

Ⅰ「コモン・グッドのための歴史教育」読書会

・『コモン・グッドのための歴史教育:社会文化的アプローチ』(キース・バートン,リンダ・レヴスティク/渡部竜也,草原和博,田口紘子,田中伸訳,2015,春風社)

Ⅱ「子ども哲学」勉強会

・『p4cの授業デザイン:共に考える探究と対話の時間のつくり方』(豊田光代,2020,明治図書)

・『ゼロからはじめる哲学対話:哲学プラクティス・ハンドブック』(河野哲也,2020,ひつじ書房)

・『探求の共同体:考えるための教室』(マシュー・リップマン/河野哲也,土屋陽介,村瀬智之訳,2014,玉川大学出版部)

Ⅲ「真正の学び/評価」読書会

・『真正の学び/学力』(フレッド・M・ニューマン/渡部竜也,堀田諭訳,2017,春風社)

・『真正の評価:テストと教育評価の新しい科学に向けて』(ハロルド・バーラック,フレッド・M・ニューマン,エリザベス・アダムス,ダグ・A・アーチバルト,ティレル・バージェス,ジョン・レイヴン,トマス・A・ロンバーグ/渡部竜也,南浦涼介,岡田了祐,後藤賢次郎,堀田諭,星瑞希訳,2021,春風社)

Ⅳ「エンパワーメント・ギャップ」読書会

・『エンパワーメント・ギャップ:主権者になる資格のない子などいない』(メイラ・レヴィンソン/渡部竜也,桑原敏典訳,2022,春風社)

いずれも現在の社会科教育研究や教師教育研究の領域において影響力のある文献であり,読書会を通して多くの知見を得ることができました。また,本コースの大学院生と学部生だけでなく,修了生や本学他コースの学生,本コース博士課程前期に進学予定の他大学学生も参加し,学年や所属を問わず対話する貴重な機会となりました。

 以下,読書会に参加した2名の学部生の感想を掲載します。

① 住友翔馬さん(当時B2)の感想

 私は「コモン・グット」,「エンパワーメント・ギャップ」「真正」の各会に参加しました。全て,なんとなく存在や概要については知っていましたが,その厚さや訳本独特の難解さなどから,手を出すことに躊躇していました。

 読書会では,各参加者に担当する章を振り分けて要点・論点などをまとめて発表する形式でした。担当章について時間をかけて読み進めつつ,他の章は担当者から簡潔かつ明快な発表を頂けたことで,学部生にとっても十分に理解でき,議論にも参加することができました。

 また,普段では「授業のサポート役-受講生」の一時的な関係しかなかった学部生と院生さんが,一緒に1つのことを進めていく機会となったことも,大きな意味を感じました。これから臨む卒業論文・卒業後の進路について,休憩時間や終了後に相談することができ,読書会の内容も絡めながら,それまでボヤけていた自身の関心を,これまで以上に明確にすることが出来ました。

 会を企画して下さった野瀬輝さんに感謝すると同時に,来年度もこの会を継続させていきたいと思います。

② 中西美里さん(当時B2)の感想

 私はこのような読書会に参加するのははじめてであり,社会科教育に対しての知識もほとんどなかったため,先輩方や大学院生の方とうまく議論ができるのか少し不安に思っていました。しかし本読書会においては,専門用語が出てきたときには先輩方が丁寧な説明をしてくださったり,議論の際には参加者の皆さんが私の素朴な疑問にも耳を傾けてくださったりしたことで,私のような知識がほとんどない学生でも議論にしっかりと参加でき,大変有意義な時間を過ごすことができました。

 また,取り扱った文献のほとんどが,現在の社会科教育で注目されている文献であったため,本読書会で得た知識や経験は3年次から始まるゼミ活動に大変参考になるものであり,研究のきっかけとなるものではないかと感じました。

 私自身もこの読書会をきっかけに,もっと学んでみたいことやこれから研究してみたいことが多く生まれました。

 本読書会で得られたものをこれからの大学生活や実践に活かしていきたいと思います。この度は貴重な機会をいただきありがとうございました。

上記感想にある通り,大学院生と学部生の関係性が構築できた点でも,読書会の意義がありました。今後も,それぞれの学生が交流しながらより良い社会科教育を作っていくことができるよう,多様な文献に触れ,対話できる機会を継続して作ってまいります。

(執筆: M1 山本亮介,B3 住友翔馬,B3 中西美里)