ブラジル・サンパウロ大学で日本の授業研究を紹介する講義を行いました。

 私(金鍾成准教授)は、サンパウロ大学の教育学部・教育学研究科の学生・院生を対象に「教師の専門性向上のための授業研究」という講義を行いました。サンパウロ大学のAgnaldo Arroio准教授の依頼を受けて実現された本講義では、2023年11月6日と7日の両日にかけて8名の受講者が参加しました。本講義の目的は、日本の授業研究を紹介するとともに、日本とブラジルの文脈を比較・考察することでブラジルにおける授業研究のローカライゼーションの可能性を探ることでした。受講者は、授業研究の哲学、すなわち、➀授業に関する知識を生産する専門職として教師、➁子どもの学びを軸にした対話および共同的探究、➂教師の専門的共同体について議論しました。また、模擬授業研究を行うことで、理論として学んだ授業研究を実践レベルで理解することができました。参加者からは、ブラジルでは他の教師とともに授業について議論する文化がないため、授業研究という発想は新鮮であり、ブラジルの教師の力量を高める重要なアプローチになりえるとのことでした。一方で、多くの教師が非常勤講師として働くブラジルの中学校・高等学校では、日本で行われているような学校を基盤とした授業研究は実施することが難しいかもしれないとも語りました。受講者には、講義の最終課題として、本講義を通して理解した授業研究の哲学をブラジルで実現するために必要な方略について考えてもらっています。最終課題を12月中旬に提出した後、その方略について話し合う機会を設ける予定です。

 本コースは、今後も授業研究をとおして世界のさまざまな地域の教師の専門性向上を支援していく予定です。

(執筆:金 鍾成准教授)