教育学部の「人文地理学実習(由井義通教授担当)」の授業の一環で、2023年6月17日(土)に沖縄県の備瀬地区で現地調査を行いました。調査は社会系コース3年生の小野健太、田代稜大、福永りお、濱野亨一の4名と由井義通教授が参加し、備瀬地区において沖縄県の伝統的な家屋や景観を調べるフィールドワークを行いました。
備瀬地区のフクキ並木は多くの雑誌、メディアで取り上げられ、並木を抜けると海を臨むことのできる美しい景観が広がっています。美しい景観を構成するフクキ並木ですが、本来の役割は家屋を四方から囲む防風林であり、台風の多い沖縄県の、特に海沿いの備瀬地区において伝統家屋の一要素として重要な役割を担っています。
調査では4人の学生で二手に分かれ、南北から家屋を一軒一軒見て回りました。フクキの防風林があるか、何方面が囲われているかに加えて、屋根や建築の様式、シーサーの数、石垣やヒンプンの有無をまとめることで、伝統的な沖縄の家屋がどれほど残っているのかを調査しました。
調査を通して伝統的な家屋は残っているものの、その数は減少していることが分かりました。自動車を使う人が多くなった現在では石垣で家を囲い、魔除けのヒンプンを設置している家は少なかったです。伝統的な赤瓦のある家屋も少なく、平屋根の家屋のほうが多くみられました。
このような傾向として、備瀬地区が観光地化していることが関係していると考えられました。備瀬地区フクキ並木無料駐車場の近くでは、観光客向けの飲食店や宿泊施設があり、それらは沖縄の伝統的な家屋を模した現代建築が多くみられました。一方で無料駐車場から離れると、かつては伝統的な家屋があった場所が空き地になっているところや以前はシーサーや石垣があった形跡はあるものの現在は空き家となり、それらが風化してしまっているところが多くみられました。
天候に恵まれず、予定していたよりも小規模な調査になりましたが、沖縄県備瀬地区の伝統的な家屋を調査することで、沖縄県の伝統がどのように失われ、一方でどのように残っていくのかという時間と場所、人間の活動の相互関係を肌で感じることができました。
(学部3年 濱野亨一)