広島県立広島国泰寺高等学校のエリアスタディに学生アドバイザーとして参加しました

2023年2月8日,広島県立国泰寺高等学校の学校設定科目「グローバル平和探究」に,本コースの大学院生と学部生が学生アドバイザーとして参加しました。参加したのは,単元「エリアスタディ」のまとめの場面です。これまで高校生らは,個々の関心に基づいて世界各地の様々な社会問題について継続的な調査を行ってきました。その途中成果を大学生に向けてオンラインで報告しました。大学生は,学術研究・各地域に関しての専門的な知識を持つ立場から,高校生の報告に対して助言を行いました。

高校生の報告は大きく2部から構成されました。

1つは,これまでに調べてきたことの発表です。どのような問題意識に基づいてどこの国・地域や研究課題を設定したのか。文献やウェブサイトをてがかりに対象地域を調べてみて,どのようなことが分かったのか。特に,その国・地域で生じている社会問題はなにが原因となって生じているのかなど,高校生は,図表や統計データを用いて調べた内容をコンパクトに整理しながら成果報告を行いました。

もう1つは,調査結果に対する行動宣言です。遠く離れた国・地域で生じている社会問題(環境汚染,貧困,差別)に対して,日本に住む私にできることは何か。高校生の自分でも今できることは何か。10年後の自分ならできそうなことは何かを,調査したことを踏まえながら発表しました。

報告は4~5名の生徒(+大学生1名)のグループ単位で行いました。生徒が調査対象とした国・地域は,アジア,アフリカ,ヨーロッパ,南米……と多岐にわたります。様々な国・地域についての報告が共有・蓄積されていくことによって,持続可能な社会や平和な国際社会を築くためのヒントが浮かび上がってきました。

大学生は,各報告を受けて助言を行いました。以下は,活動に従事した学部生の気づきと感想です。

〈1.調査内容にみる高校生の傾向性〉

次の3点から,国泰寺高校の生徒がもっている社会的・政治的関心や研究能力の高さを実感しました。

① 調査の対象について。環境問題,貧困,劣悪な教育環境について関心をもつ生徒が多くを占めていました。こうした問題にアプローチするために,発展途上国を調査対象とした生徒が多かったです。一方で,自身の将来のキャリアや趣味にかかわって問題設定を行う生徒も一定数見受けられました。

② 調査の方法について。日本ではなじみのない国・地域を調べるために,ウェブサイトを活用する生徒が散見されました。情報リテラシーを働かせながら,適切な情報をうまく取捨選択できていました。信頼性の高いデータを引用しながら,説得力の高い発表に仕上げることのできた生徒が多かったことに驚きました。

③ 結果の考察について。生徒たちは,地理・経済・文化といった様々な視点から問題を分析しようと努めていました。その結果,就学率の低さや水質汚染といった個別的な問題はもちろん,その背景にある構造的問題(男女格差,モノカルチャー経済等)にも目を向けることができていました。

〈2.行動宣言にみる問題解決学習の難しさ〉

生徒は,①今すぐにでもできることと,②将来(約10年後)にできることの2つに分けて,自らの行動を宣言しました。①としては,「少額でも募金をする」という行動宣言を多くの生徒が行っていたほか,「世界の国々における問題により一層関心を持って学びを深めることで将来に備える」といった宣言も見られました。②としては,「経済的に自立したら,多額の募金や定期的な金銭的支援を行う」のほか,周囲の人や世の中の人々に,世界の国・地域で何が問題となっているかを知ってもらうために活動を行う」,さらには自分の将来の職業と結び付けて「問題の解決に資するものを開発する」といった意欲的な宣言をする生徒もいました。

ただ,行動宣言の多くが「募金すること」に偏りがちでした。また,どの組織にどのような方法で働きかけるのかといった行動計画(戦略)を具体的に示している生徒が少ない印象でした。そこで,「あなたは誰に,何をアピールするべきなのか?」「なぜそうすることがよいのか,そうすることで何が期待できるのか」「今後の人生でどのような研鑽を積みたいか?」などの問いかけや助言を行い,行動計画づくりの支援に努めました。

今回の「エリアスタディ」を通して,生徒たちの課題発見・問題解決学習の質の向上を図るために何を意識して助言すべきか,また情報機器を活用した授業を円滑に進めるために留意すべきことは何か,などについて深く考えることができました。

社会系コースでは,学校現場とのかかわりを通して中高生の学びを支援する機会が得られます。このような経験を通して,社会科の内容に関わる実践的な指導力はもちろん,プロジェクトを協働して遂行する能力を高めることもできます。今後もこのような機会に積極的に参加し,社会科教師に必要な「志」と「技」を磨いてまいります。

 最後に,貴重な機会を与えていただいた広島県立広島国泰寺高校の先生方に御礼を申し上げます。

本活動には,以下の大学生・大学院生が協力しました(所属・学年は実施当時)。

大学院人間社会科学研究科

両角 遼平(社会認識教育学・博士課程後期4年生)
髙見 史織(社会認識教育学・博士課程前期2年生)
藤井 冴佳(教育学・博士課程前期2年生)
𠮷田純太郎(社会認識教育学・博士課程前期2年生)

教育学部

内田 智憲(社会系コース・3年生)
黒岩 佳太(社会系コース・3年生)
近藤 郁実(初等教育教員養成コース・3年生)
松原 信喜(教育学系コース・3年生)

(B4 内田智憲・B4 黒岩佳太・D1 𠮷田純太郎)

取り組みの様子①:広島大学大学院生による助言
取り組みの様子②:国泰寺高校の生徒によるオンラインでの発表