熊本県御船町・益城町周辺で活断層調査を行いました。

 8月8日~12日にかけて、学部生3年3名(鬼塚雄人、宇佐美大聖、谷川慶悟)と院生3人(岩佐佳哉、住谷侑也、村上正龍)、熊原康博准教授で熊本県御船町・益城町周辺で活断層の調査と巡検を行いました。
 内陸直下型地震で地表に地震断層が生じる事例はよく見られますが、本震後にも断層上で変位が生じるのは世界でも例がありません。博士課程前期2年の住谷さんは,これまで継続して調査を行ってきました。今回,学部生3人は調査の補助として参加しました。
 
 8月8日では、ドローンを用いた撮影と地震後の変形が見られた場所の近くの住民の方に聞き取りを行いました。ドローンを用いた撮影では、上空から対象の範囲を何枚かの写真に分けて撮影しました。これらの写真は、調査後に専用ソフトを用いて3Dモデルを作成するために利用し、3Dモデルから3次元的に変形を明らかにします。
 その作業が終わった後、住民の方へ聞き取りを行い、前回調査からどのような変化があったかを聞いて回りました。この後の詳しい調査の下見として行い、結果として一年間の変位を計測できる地点を見つけることができました。
 8月9日から8月12日にかけては地形の変位を詳細に計測するため、トータルステーションを用いた精密測量を行ったほか(写真1)、今まで撮った写真と同じ画角で写真を取り、変位を比較する作業を行いました。調査対象としては住宅の塀の歪み、道路のアスファルトの亀裂など、変位が実際に認められるものを詳細に計測しました。(写真2)
 
 また調査が順調に進み、予定より早く終わったため、通潤橋用水の巡検も行いました(写真3)。通潤橋は水の少ない白糸台地の人々のために作られた橋で、その上流には規模の大きい円筒分水槽があります(写真4)。円筒の中の仕切りの割合に応じて、水が分配されており、上流周辺の集落と通潤橋方面へと水を振り分け、定められた割合通りに水を分配する機能を担っています。
 通潤橋では保守用の放水機構が設けられており、決められた日に、一日一度のみ放水が行われます。本来は水路に溜まった土砂や木材を放出するためのものですが、現在は観光のアトラクションとして有名になっており、我々が放水を見学するときも多くの観光客が見受けられました(写真3)。

 例年であれば9月に調査するところを8月に調査したため暑さに苦しんだ調査となりましたが、雨が降ることもなく、着実にデータを集めることができました。今回学部生は主にサポートとしての役割でしたが、今後の自分の研究に際しては今回の調査で得られた知見を生かしていきたいと思います。(学部3年 鬼塚雄人)

 天候にも恵まれ、絶好のフィールドワーク日和の中での調査となりました。断層線に沿って実際に自分の足を使いながら地面の割れなど痕跡をたどることで、まだまだ確かに地震の爪痕が残っていることがよくわかりました。
また、復興が進む中でいまだ動き続けている断層と人々の生活の関係性についてよく考える必要があると感じました。(学部3年 宇佐美大聖)

 実際に自分の足で断層を確認しながら歩くことで熊本地震の規模の一端を確認することができました。また、トータルステーションなどを用いた測量を初めて体験したので、これからの自分の研究にとって良い経験になったと思います。(学部3年 谷川慶悟)