昨年度より,学部2年の赤田拓哉,一柳真帆,西屋優人,山本健人の4名で,全国の原爆関連碑に関する研究を継続的に行っています。原爆関連碑とは,①原爆による犠牲者が弔われていること②原爆被害や悲惨さを伝えていること③非核三原則や核兵器の廃絶・禁止・反対の目的があること④被爆物が碑として保存されていることのいずれかに該当するものとして定義づけているものです。原爆関連碑の位置や属性を把握し,年代ごとの碑建立の推移や歴史的事象との関係を調べることを目的として,インターネットや文献で調査を進めてきました。現時点で調べることのできたものは全国で554基あり,そのうち広島市に237基,長崎市に128基と,被爆地や人口の多い関東を中心に,北海道から沖縄まで幅広い分布がみられます。
広島市は大半の碑が1980年代ごろまでに市民団体によって慰霊の目的で建てられていますが,長崎市は非核・平和を目的にした碑もさまざまな建立主体により建てられています。全体的な推移としては,原爆投下後10周年・5周年ごとの建立や仏教の法要に合わせた建立が多いことや,平和非核都市宣言や平成の大合併,被爆者手帳の交付開始,ローマ法王の長崎訪問など歴史的事象との関係も認められました。また被爆者手帳保有者数と原爆関連碑の基数には正の相関がみられ,2都市間の被害の差が碑の数の差に影響しているのではないかとも考えられます。
以上のような研究の取り組みや成果について,中国新聞社及び共同通信社から取材を受けて,記事に掲載されました。
■中国新聞の記事(こちら)
■共同通信社の記事(こちら)
■YAHOO!ニュース(こちら)
また,5月21日(土曜日)に地理科学学会 2022年度春季学術大会において,「全国の原爆関連碑の分布調査」として発表しました。初めての学会発表ということもあり,皆緊張しました。準備の際には,誰にでもわかる内容のパワーポイント資料の作成を目指し,オンライン会議などを通じて作成していきました。発表では,参加者から専門的な質問やアドバイスを頂き,今後の研究の進め方への示唆を頂きました。
これからもさら原爆関連碑に関する調査・研究を進め,学術論文の執筆,教材開発,原爆関連碑の立地や属性データの公開などを行っていきたいと考えています。
(学部2年 赤田拓哉,一柳真帆,西屋優人,山本健人)