大学院の授業で東広島市西条町三升原でフィールドワークを行いました

 

 4月20日(水)に、大学院の授業「環境・社会と学習材デザイン基礎研究(社会・地理歴史)」(熊原康博准教授担当)において、東広島市西条町三升原周辺でフィールドワークを行いました。

 当日は,熊原准教授より,「近くを流れる黒瀬川よりも高い台地上は通常水が得にくいはずなのに,なぜ広く水田地帯が広がっているのか」という問いがフィールドワークの冒頭に学生たちへ投げかけられ,江戸時代の絵図や明治時代と現代の地形図などを資料として見比べながら三升原→千年池→千足池というルート(約5km)を巡検しました。

 今回歩いた西条町大沢~田口にかけての地域は黒瀬川の支流松板川が作り出した扇状地性段丘面上に位置し,江戸時代から新田開発を進めるためにたくさんの用水路が整備されてきました。今回特徴的だったのは「揚溝(あげみぞ)」と呼ばれる用水路です。これはより遠くまで効率的に水を運ぶための工夫で,盛土の上に用水路が通っています。農地や宅地,道路よりも標高の高いところを用水路が通っており,先人たちの知恵と苦労を肌で感じることができました。また,円筒分水と呼ばれる方法によって水源地から水利慣行どおりに水が各地区に行き渡るよう設計されており,かつての人々にとっていかに水が重要であったか,争いの種となってきたかを考えさせられました。

 近代以降に道路が作られたことで揚溝が分断されている箇所を確認したり,用水路周辺に休耕田や耕作放棄地が多くある地域を確認したりすることもできました。時代の変化に伴って,人々にとっての水のプライオリティ(優先度合)が下がり,宅地開発や道路網の整備などが優先されてきたことも事実です。今回確認した用水路は今も現役で利用され,周囲の田畑を潤しています。どこでも自由に水が使えると考えがちな私たちの日々の暮らしは当たり前ではなく,先人たちの積み上げてきたものの延長線上にあることを改めて振り返る貴重な経験となりました。(M1 首藤慧真)