大学院生が県立広島高校の生徒の卒業研究を指導しました

2022年2月17日,博士課程前期2年の村田一朗さん・同1年の住谷侑也さん・私(吉田純太郎)が広島県立広島高等学校「総合的な探究の時間」に協力しました。

県立広島高校は,「知の総合化を図る主体的な学習者の育成」を目標に,「総合的な探究の時間」の一環として高校3年生に卒業研究を課しています。今回の協力は,昨年11月に引き続き,卒業研究に向けて準備を進める高校2年生を対象としたものです。先の指導・助言を受けて,現在生徒は卒業研究を進めているところです。この3か月の間で進展したことは何か。研究を進める中で,今度はどのような課題に直面したのか。今後,卒業研究をどのように展開していけばよいのか。生徒たちはパワーポイントを使って,研究の現状や今後の計画を大学院生に発表しました。感染予防のため,指導はあいにくオンライン上で行われましたが,大学院生はウェブ会議ツールを活用して生徒に適切なアドバイスを与えています。

研究ならびに今回の指導・助言の一例を以下にお示しします。ある生徒は,自分が住んでいる地域の伝統行事の在り方について研究しています。以前は活況を呈していた地元の祭りがコロナ禍によって中止となりました。もし祭りをオンラインで開催するならば,いったいどうすればよいのだろうか。オンラインでも祭りを成功させたいという思いから,東広島市の酒まつりを事例として批判的に検討して,オンライン行事の方略を考察しています。私は,この生徒に対して「祭りの成功」とは一体どのような状態を指すかを尋ねました。多額の収益を稼げる祭りが良い祭りなのか。来場者が満足できる祭りを作り上げることも大事なのではないか。あるいは,伝統文化の継承の観点から祭りを捉えてもよいのではないか。もっと広い視野から祭りのもつ機能を捉える必要があるのではないかと指導しました。このように,私は,生徒が持つ見方・考え方を大きく揺さぶるような助言をしています。研究を通じて,物事を多面的に考察する視角をもってもらいたいという意図があります。

このような大学院生の指導に応えて,生徒たちは大いに成長していると感じました。今回の指導では,3か月という短い期間のなかで,卒業研究を着実に進展させた生徒たちに大学院生は驚きを感じました。指導を終えた大学院生の感想は以下の通りです。村田さんは,「研究と調べ学習の違いは何か?」,「事例を絞ると一般的な示唆を言及できないが,研究として成立するか?」,「主観的だと言われないためにはどうすればよいか?」などの幅広い議論をすることができました。自分の研究者・教育者としての構えを改めて考えるきっかけになったと話しています。住谷さんは,「研究のオリジナリティを追求すること,自ら生データをとることの重要性などを共有することができました。11月の指導よりも先行研究を踏まえた研究が増えてきており,個人の探究心を超えて学問レベルでの意義を見出しつつあることを実感しています。自分にとっても刺激のある経験となったとのこと。私は「研究内容を深化させることはもちろん,引用や出典を適切に記載しようと考えるようになったことからも,生徒の成長をまざまざと実感しました。彼らは,先駆者たちに敬意を表しつつも,一方で先行研究の到達点を乗り越えるべく研究を続けています。その姿勢を私も見習わねばならないと感じました」との感想を持ちました。

 この度の活動を通じて,県立広島高校における卒業研究が更に前進することを心より願っております。

(M1 吉田純太郎)