教員と大学院生が熊本県立済々黌高校でオンライン講演を行いました。

 川口広美准教授と博士課程前期2年の村田一朗さんは,12月7日(火)に熊本県立済々黌高校にて,「多様な人が生きやすい社会を作るためにー社会科教育学の視点からー」というタイトルの講演をオンラインで行いました。この講演は、総合的な探究の時間の「済々未来探究」という授業の一環で行われたものです。

 講演では、①社会科でなぜ多様性理解なのか?、②性的マイノリティの人たちがなぜ生きにくいのか?、③外国ではどのような取り組みがなされているのか?、④日本ではどのような取り組みをしているか?、の4部構成で行われました。①~③は主に川口が、④は村田さんが担当しました。

 まず、多様性の尊重や理解が社会科の目標として関連付けられていることを説明し、「社会の制度が変われば問題解決に向かうのか?」「人の規範や意識が変われば問題解決に向かうのか?」という問題提起を行いました。即ち、社会の制度と人の規範や意識の変化という双方の視点からみた場合の、教育の意味や意義を提示しました。その後、アメリカにおける性的マイノリティに関する実践の紹介を行い、宗教上の対立が論点になっているという点で日本における同性愛嫌悪の原因とは異なるということを説明しました。その上で、日本での実践として、村田さんが卒業論文研究で行った「性別記入欄にXジェンダーを付け加えるべきか」の紹介を行いました。その過程で、村田さん自身が性的マイノリティについて研究を続けることそのものの難しさやそこでの葛藤などを示しました。

 授業を聞いた生徒の皆さんからは「日本の学校で性的マイノリティを教えることはできるのか?」「性的マイノリティに対する排他的な発言があった際にどう対応するか?」「今後、性的マイノリティに対する寛容さは増えていくと思うか?」「性的マイノリティについて学びたい際に、どこで学べるか?」といった点についての質問がありました。これに対して、日本の学校カリキュラムの中で、日本の学校教育で教えなければならないという制度は整っていないが、教師として必要だと感じて取り上げている人は多くいるということ。排他的な発言があった場合は、まずはそれに対して許さないという雰囲気や文化を構築していくことの重要性などを答えました。答える中で、私たちも日本の大学で専門的な学部がないことの意味や課題性、寛容さを構築することの難しさを改めて考え直すことができました。

今後、生徒の皆さんが、それぞれの探究を進める際に、この講演が少しでも参考になれば幸いです。