大学院生が県立広島高校の生徒の卒業研究を指導しました

2021年11月18日,博士課程前期2年の村田一朗さん・同1年の住谷侑也さん・私(吉田純太郎)が広島県立広島高等学校「総合的な探究の時間」に協力しました。

県立広島高校は,「知の総合化を図る主体的な学習者の育成」を目標に,「総合的な探究の時間」の一環として高校3年生に卒業研究を課しています。今回の協力は,卒業研究に向けて準備を進める高校2年生を対象としたものです。生徒らは「高校生はどれほどマイバックを使用しているのか」,「東広島市原産の西条柿の生産量を向上させるにはどうしたらよいか」,「コロナ禍によって日本の観光地はどのように変化したか」といったように,自らの興味・関心に応じて研究課題を設定し,その究明に向けた「卒業研究計画書」を作成しています。この計画書には「自分の研究が持つ意義は何か」,「自分の研究にはどのような先行研究があるか」,「自分の持つ仮説は何か。それをどのようにして検証したらよいか」といったことをまとめており,大学院生は,生徒各自の計画書の充実を図るために助言を行いました。

具体的な問いかけや助言の一例としては以下の通りです。「なぜ高校生のマイバックの使用実態を明らかにしなければならないのか。読者が分かるように問題意識を論じる必要がある」,「柿の生産量向上をブランド化だけに求めてよいのか。生産者の高齢化など地域の現状にも目を向ける必要があるのではないか。もっと視野を広げて,多様な先行研究を当たってみるとよい」,「実際に宮島や原爆ドームへ足を運んで,観光客やお土産屋の話を実際に聞くことで,データを収集してみてはどうか」。助言を通して生徒の研究計画がより充実し,これからの取り組みが明確化するように心がけました。生徒らは大学院生からのコメントを受けて,メモを取ったり,何度も質問をしたりするなど,意欲的な姿勢が見られました。

生徒らの熱心な様子から大学院生も大いに刺激を受けました。また,生徒が抱える悩みは,大学院生らも自らの研究において直面する課題でありました。この研究指導は,大学院生にとって自己の研究活動を見直す機会となっています。授業後,村田さんは「高校生の卒業研究の指導を通して,自分の研究観を振り返ることができました。県立広島高校の生徒は自分から学ぶ意欲が高く,2月の報告会を楽しみにしています」,住谷さんは「どの生徒も積極的で非常にやりがいがありました。自分の興味関心と専門分野の背景を大切にして研究を進めてもらえるようアドバイスしました」,私は「時事的な問題や,身近な地域の問題に対する生徒の高い関心が印象に残っています。社会科学の知見を活用しながら,生徒が課題と今後どのように対峙していくのか注目しています。」との感想を持ちました。

この度の活動を通じて,県立広島高校における卒業研究が大いに進展することを心より願っております。

(M1 吉田純太郎)