大学院の授業で一押しのものも2つあって、一つ目はNIE(Newspaper In Education)という新聞を活用した教育の理論構築や実践開発、教材作りを行うものです。これは社会認識教育学講座の授業で、学校教育の中だけでなく、生涯学習対応の社会認識教育として新聞を取り上げて重点的にやっています。
もう一つは「体験型海外教育実地研究」。これはアメリカのノースカロライナ州の学校に実際に行って、公立の小学校や中学校において日本の文化を英語で伝える授業を大学院生がするという、海外での教育実習のようなものです。本年度は15人(うち社会認識教育学講座の学生は2人)が参加しました。
研究において自分がどこの分野で新しいものを開拓していくかとなったときに、メディアや博物館、公民館で開かれる講座なども立派な授業の一つだと考えて、このような生涯学習対応の社会認識教育も考えられないかと思い、その分野を開拓していこうと思ったのです。生涯学習対応の社会認識教育という大きな枠組みの中で最初は博物館やメディアなどを一年おきに取り上げていて、いまは新聞に落ち着いているところです。新聞を取り上げて授業をするメリットは、新聞を活用した授業はメディアリテラシーを育てつつ、社会の現実や課題を反映した新聞を用いて議論をしていくことを可能にすることだと考えています。社会科教育としての新聞を活用した授業は社会をよりよくしていく思考を育てたり、社会に関心をもつ意識というもう一つの学力を育てたりすることもできるのではないでしょうか。新聞は思考・判断・表現をしているもので、新聞をつくっていくという子どもの作業は、調べてまとめるだけではなくその事象の背景を読み解きそれに対して自分の意見を述べる力が身に付くということで、新聞活用がそういう力を育てることができ、教育の今日的な課題に応えるものになると思っています。
しかし、今の若い先生は新聞を読んだことのない人もいます。そうすると新聞をただ資料としてしか使えなくなってしまいます。新聞の切り抜きをさせて感想を述べさせるだけだと新聞嫌いも生まれかねません。面白いと思ったことのないものを面白く教えることはできないからね、だから教員になる前に新聞を活用できる力をつけることも必要になってくると考えるのです。
夏休みの期間に一週間、アメリカの小学校や中学校で、英語で現地の子どもたちに文化を伝える授業をやってみるという授業です。英語で授業をやるということは言葉でごまかせないということ。だから子どもたちに伝えるための教材を開発するという意識が本格的に生まれてくる。英語を手段として用いて、伝えたいことをどれだけ伝えられるか、最終的には指導案も英語で書かないといけないのでかなりハードな2単位の授業だとは思いますが、参加者は楽しんでくれています。
まず地域・日本・世界の子どもたちのための教育課題に応える研究を目指してほしいですね。そして仲間との協働の中で、新たな「知」を創造するような開発研究を目指してほしい。さらに、教員養成(人を育てる)という視点を忘れないでほしいと思っています。