卒業生・大学院生・教員で地歴融合の研究を進めています。

本コースの卒業生(弘胤 佑さん[現広島城北中高教員],竹下紘平[現東広島市文化課])と,博士課程後期の大学院生(横川知司さん,岩佐佳哉さん,原田 歩さん)と熊原康博准教授の研究グループは,6年前から西条盆地南部の河岸段丘面上で行われた江戸時代の新田開発の進捗過程について研究を進めています(下記の論文)。

現在は,黒瀬川左岸のある三升原地区の新田開発について,古文書,絵図,圃場整備前の空中写真,旧版地形図,フィールドワークなど,地理学と歴史学の手法を融合した研究を行っています。現在はコロナ禍にあるため,研究はオンライン(zoom)を使って進めており,古文書や絵図の画像を共有して提示し,それらに書かれている文字を参加者で解読した上で,開発の意義や特徴などを議論しています。

古文書の記載内容を現実の地形に適用する試みはこれまで行われてきました。しかし,三升原地区は大規模な圃場整備,新幹線の線路建設などにより地形が大きく改変されています。そこで,圃場整備前の空中写真を使って地形改変前の3D地表モデルを作成し,江戸時代と同様の地形を復元して検討するなど,画期的な手法を用いています。

今後は,いままでの成果を整理して,今年度中の論文投稿に向けて原稿を執筆する予定です。

熊原康博(2017):扇状地性段丘地形における新田開発の水利の特徴―広島県西条盆地南部,柏原地区を事例に―.広島大学大学院教育学研究科紀要,第二部(文化教育開発領域),第 66 号,59-66. https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00044779 

弘胤 佑・下向井龍彦・熊原康博・佐藤大規・岩佐佳哉・竹下紘平・横川知司・氏原 秀・浅井詩織(2018):19世紀初頭の東広島市西条盆地南部,柏原における新田開発初期の進捗過程―「国郡志御用書上帳 賀茂郡柏原 ひかへ」の分析―.広島大学総合博物館研究報告,第10号,71-90.https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00047299 

岩佐佳哉・熊原康博(2018):広島県西条盆地南部,柏原・三升原地区の神社境内の石造物の同一性とその成立経緯.広島大学総合博物館研究報告,第10号,103-110. https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00047301 

熊原康博・岩佐佳哉・横川知司・佐藤大規・下向井龍彦(2019):東広島市西条盆地南部の放棄用水路のマッピングとその意義. 広島大学総合博物館研究報告,第11号,63-77. https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00048827 

熊原康博(2020):なぜ沖田嘉一はトンネルを掘ったのか.横川・熊原編著『西条地歴ウォーク』レタープレス刊,pp.30-33. 

横川知司(2020):用水トレッキングのすすめ.横川・熊原編著『西条地歴ウォーク』レタープレス刊,pp.34-37.