オーストリアにて政治教育に関する調査を行いました

本講座の草原和博教授を代表とする「オーストリア政治教育の挑戦-教室空間で政治問題をいかに教えるか-」(科研・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)))では,政治的中立性の課題を乗り越えて,日本で政治教育を実践・実現していく方略ついて共同研究を行っています。本講座の関係者では,川口広美准教授,金鍾成助教,池野範男名誉教授,博士課程後期を修了した渡邉巧先生が,本プロジェクトに参画されています。

オーストリアは世界で初めて16歳選挙権を導入した国として知られます。政治意識の高い若者を育てるために,制度的にも実際的にも政治教育を充実させてきたオーストリアの取組は,日本の主権者教育,市民性教育の改革に様々な示唆を与えてくれます。

3カ年計画の初年度にあたる2018年度は,3月上旬に集中的な予備調査を行いました。ウィーン市内1校,グラーツ市内3校のギムナジウム(大学進学を想定した中等学校)で,「ナチによるオーストリア併合」「1920年憲法の原則」「アジアの脱植民地化」「政治的勇気とは何か」「EUと私たちの暮らし」「自由研究論文」などの授業を観察するとともに,教師への聞き取り調査を行いました。またウィーン大学・グラーツ大学の共同研究者と打ち合わせを実施しました。
調査の結果,①政治的中立性は「教師・子どもの実践に対する政治的な縛りや自粛」ではなく「教師・子どもの政治的な発言や行動の自由」として理解されていること,②学校生活の中で,生徒は「大人=市民」として扱われているし,現に生徒はそのように行動していること,③日常的に歴史と政治,概念と倫理,分析と判断を往還する実践が行われていること,などが確認されました。

本プロジェクトチームは,継続的に調査を重ね,日本の政治教育の改革に向けた様々な提言を行って参ります。